組踊がわかる本

●組踊がわかる本
監修:大城立裕 漫画:漢那瑠美子 沖縄文化社刊

 組踊好きな私は、かつて「漫画 組踊と沖縄芝居」という本を企画・編集しあことがある。結果は惨憺たるものに終わった。
 売れなかった。笑ってしまうほど売れなかった。自信作であっただけに、ショックは大きかった。やはり好きなジャンルの企画をするには、慎重にも慎重を期さないといけないものだということを教えてくれた本であった。
 言い訳をさせていただければ、発刊したのが今から10年以上も前のこと。国立劇場もなければ、琉球古典音楽や組踊歌三線で人間国宝が認定されるなんて夢にも思わなかったときである。早かったのかもしれない。
 などと、自分自身を知らず知らずのうちに慰めている。あれから、私は「売れない本を編集する編集者」と自虐をこめて自称している。

 私自身のことはさておき、本書を手に取ったとき、「やはりこのジャンルの本が出版されたかぁ」という思いとともに、嫉妬めいた感情も生まれた。

 面白いのである。組踊の登場人物たちが見事なまでに描かれているのである。
 監修の大城立裕氏は、新作組踊を創作しているほどであるから、組踊に精通していることは理解できるが、漫画を描いた漢那瑠美子さんの絵がいいのだ。組踊をしっかりと鑑賞し、作中人物たちへの思い入れをもって描いているというのがよくわかる。
 本書の中で玉城朝薫の作り上げた人物たちが、キャラクターとして、生き生きと躍動している。
 売れない組踊の漫画本を編集し私が悔しく思うのも当然だと理解して欲しい。

 あまりに悔しいから、内容を紹介するのは止めにしておきたいけど、そうもいかないので、簡単に(あくまでも簡単に)紹介しよう。
 本書で取り上げている組踊は、組踊を創始した玉城朝薫の組踊五番。後世に続く組踊のエッセンスを全て網羅したような内容の作品たちである。組踊として最初に上演された「二童敵討」から始まって、「執心鐘入」「銘苅子」「孝行之巻」「女物狂」の五番が、舞台から漫画の紙面へと変化して描かれている。
 人間が演じる人物ではなく、漫画らしく漢那流のキャラクターとして展開しているので、組踊に対して、難しいというイメージを持っている方がいれば、本書を読めば即座に「組踊ってこんなに面白いものだったのか」と思うこと請け合い。それに、大城氏の解説とあらすじが掲載されているので、これ以上、組踊をわかりやすくはできないだろうというほど。
 難解な解説書などを読むより、ずっと理解が深まるだろう。表紙をみれば、面白そうだって感じるとは思うけどね。

 ちなみに、私のオススメは最後に掲載されている「女物狂」。笑いあり、恐怖あり、涙あり、愛情ありの人間ドラマ。特に97ページから102ページまでは、是非読んで欲しいところ。
 組踊初心者は本書を読んでから観劇すると、より理解が深まるし、観たことのあるかたなら、思い出しながら読むと、尚更組踊の面白さがわかってくるだろうし、また観たいと思うに違いない。
 「読んでからみるか、見てから読むか」などという宣伝文句で、評判を呼んだ映画があったけど、この本と組踊はどっちからでもいいんだよなぁ。結局。

 ということで、組踊をもっと観に行こうよ。というのが、私の結論であります。
(06年8月9日)

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