「ぶながやと平和のたね」と「ブナガヤと山善オジー」「ぶながやの見た夢」

●「ぶながやと平和のたね」と「ブナガヤと山善オジー」「ぶながやの見た夢」
たいらみちこ作 紅型染絵 紅型染工房ぶながやみち刊

 本書は、たいらみちこさんが描くブナガヤシリーズの3作目。私が楽しみにしていた本だ。
シリーズ第1作「ぶながやと山善オジー」を手にしたとき、私は吃驚仰天してしまった。とにかく絵が綺麗なのだ。

 まず、見返しが表も裏も図柄が違う。見返しというのは、表紙の強度を高めるために付けられている紙で、色用紙を使用することが多い。この見返しをたいらさんは見事に変身させた。紅型染めをそのまま見返しとして使っているのだ。それも前述したように、表見返しと裏見返しの図柄を変えて……。見返しの段階からたいらさんの世界に魅きこまれるではないか。
見返しは、単なる見返しではなく、本の内容をさりげなく表現するものだという意識はあったが、たいらさんの見返しによって、本のイメージが編集者として硬直化していたことに気づかされたのであった。

 また、これまで紅型というと、着物や風呂敷はもちろんだが、室内の装飾品として、ハンカチなどの小物類として商品化されているのは見たことがあったが、絵本の絵として染めるなんて、まさしく発想の転換ではないだろうか。
とにかくビックリぎょうてんの絵本だったのだ。

 このように書いていくと、前に進まなくなっていくので、内容に入っていくことにしよう!

 とにかくビックリした私は。たいらさんの世界に魅きこまれながら、あっという間に読んでしまった。キャラクターのブナガヤも可愛いし、絵とキャラクター、話の展開が独自の世界を構築していて、内容も面白いものであった。紅型がこんなにも表現力が豊かな染織物だとは知らなかった。いろんな人に勧めてきたが、皆一様に紅型の作り上げる世界に驚嘆の表情を浮かべ、喜んで読んでくれた。続編の刊行を楽しみに待っていた。

 2作目の「ぶながやのみた夢」も、予想を裏切らない内容だった。そのたいらみちこさんの3作目。たいらさんは、これまで、「ぶながやと山善オジー」でブナガヤと人間の過去を、2作目「ぶながやの見た夢」では、ぶながやと現在の人間、そして社会を描いてきた。2作目、そして本書と、たいらさんの描くぶながやの表情は暗い。しかし、それも冒頭でのこと。最後はぶながや本来の明るい表情に戻っていく。本書では、ぶながやと人間社会の未来像を描いている。それも、沖縄国際大学のヘリ墜落事件をきっかけとして物語が展開していく。たいらさんの理想とする世界を…。

 本書でたいらさんが主張しているのは、幸福というのは待っていても来るものではない。自分たちが行動し、願わないとやってくるものではない。そして、平和はすべての人間に平等である。万物が共生しないと、真の平和だとはいえない。そのことを3作を通して訴えていると思う。平和主義者のぶながやが生きていくためには、武器も戦争もあってはならない。私たち人間も同じはずだ。かつて船越義彰氏は、詩というジャンルで「キジムナー」を描き、平和であることの大切さを訴えた。今、たいらさんが紅型という沖縄独自の工芸を通して「ぶながや」を描き、主体的に平和を育ててくことの大切さを訴えている。3作を通して、身近な方々と平和の大切さを考えるのもいいと思う。それも、見とれてしまうほど美しく、表現豊かな紅型の世界があるから、余計に平和の重要性が理解できると思う。


 たいらさんの描く平和の味は、深遠で甘美である。
(06年8月14日)

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