沖縄の庭を見直そう 琉球ガーデンBOOK

●沖縄の庭を見直そう 琉球ガーデンBOOK
比嘉淳子/文 飯塚みどり/写真 ボーダーインク刊 定価1600円(税別)

 身近な自然、それが庭。考えてみると、土の地面を踏みながら歩くことが少なくなった。いや、土を見ること自体が少なくなったのではないだろうか。

 私は那覇から糸満まで通っているが、道中はずっとアスファルトで舗装されている。もちろん、那覇から糸満までは南風原、東風平、糸満の農村地帯を通るので、畑を見ることはあるが、未舗装の道路が少なくなった。話は変わるが、先日、サトウキビ畑の写真を撮りに行ったが、ファインダーを覗くのに夢中になりすぎて、2メートルくらいの段差を転げ落ちてしまった。下は何も植えられていない畑だったので助かったが、これがコンクリートかアスファルトだったらヘラヘラと笑って帰ってこれなかったにちがいない。土っていいもんです。但し、むき出しになった土はいけません。やはり、その上に緑がないと、興趣が削がれるっていうもんですよね。などと、無理矢理、土や緑の良さに結びつけたようだけど、自然って、やっぱり大切なもの。私たちの目を楽しませてくれるし、心を潤してくれる。

 それが、本書を読み、鑑賞し、勉強すれば、自然の大切さを知ることが倍増すること間違いない。私などは、小さなマンション住まいなので、この本に掲載されている樹木を鉢植えにして、ベランダに置きたいと思ったほどだ。このように紹介すると、本書は単なる庭に植える樹木を中心にした実用書のようだが、実は違う。

 それには、著者の『はじめに』の言葉を引用してみるのが良いだろう。

(略)私の心の中に広がる沖縄の風景は、ハブの抜け殻(……とってもきれいなのよ!)をさげた秘密基地が作れるほど大きく枝をひろげたガジュマルの姿や、ムーチービーサの寒さで手を真っ赤にしながらゲットウ(月桃)の葉を洗った冬の日だったり(中略)沖縄には琉球王朝時代から伝わる「琉球庭園」と呼ばれる伝統的な庭の形式があります。例えば、家を造る時に〈家相〉を参考にする人もいるでしょう。同じように、庭にも言い伝えられてきた〈庭相〉があるようです。(略)

 なのです! 沖縄には昔から伝わる庭造りの思想があったのです。沖縄らしい庭造りの植物もあったのです。そして最大の特長は、沖縄の身近にある植物を、その植物が適した場所の紹介をしているところなのだ。なんと、植物に適した場所ではなくて、植物が適した場所なのですよ! 適材適所という言葉は聞くけど、適樹適所なのです!また、この分類の仕方が著者ならでは、というか独特!場所別に、「シンボルツリー」「生け垣・庭木」「家の裏」「門の脇」「キッチンガーデン」「公園・街路樹」「玄関脇」「インドアプランツ」「御嶽の植物」の九つに分け、更にキャラクターマークを付記している。それがまた面白い! これもまたなんと、「魔よけ」「嘉利吉」「聖木」の3種類あるのだ!思わず「!」をいっぱい付けた文章になってしまったけど、本当に面白いと思いませんか?

 まず、場所別に『家の裏』『御嶽の植物』とありますねえ。家の裏って、考えてみたら、昔でいうところの『アタイグヮー』じゃないですか。選ばれている植物も、バショウにビワ・ザクロ・ヒラミレモンと、実のなる植物だし、薬としても実用性のある植物ばかり。『御嶽の植物』にしても、ビロウ・アダン・ソテツ・クロツグ・オオタニワタリと、聖にして魔よけになる植物が並んでいる。他にも沢山の植物が、この本の中に繁茂しているのだけど、紹介できないのが惜しいくらいだ。
 植物の写真だけでなく、きちんと植物の解説やおばあちゃんの智恵っぽい、一口メモなどもあるので、庭や各所に植えて最適の植物に詳しくなること請け合い。巻末には、「実践ガーデニング」として、土づくりから堆肥、育て方なども掲載されているので、至れり尽くせりの内容といっても過言ではないだろう。きっと、貴方も、本書を手にしたその時から、自分なりの琉球庭園を造ってみようと思うことだろう。

 そうか! こんな意味があるのか! そういえば、じいちゃん・ばあちゃんから聴いたことがあるなあ! など、いろんな感想が生まれてくることだろう。本当に目から鱗が落ちるとは、この本のためにあるような言葉。沖縄ってまだまだ主題があるんだなぁと、私自身思った本でした。本当に手にとってみないと、この魅力は味わえませんよ!最後まで「!」が続く、今回の県産本ライブラリーでした!
(06年9月19日)

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